福岡映画祭の目的のひとつに知られざるアジア映画の発掘がある。ベトナム映画特集で上映された9本の作品がこの目的を世界的な意味で果たすことになった。国内では国際交流基金「東南アジア祭 ‘92」の一環として東京で全作品が上映され、また「河の女」や「黒いサボテン」等がNHK-BS2で放映された。国際的にはハワイ、香港等の各映画祭、ニューヨークやシカゴ等での上映会に招待され、その都度プリントが福岡から貸し出された。これは当時ベトナムに字幕を製作する技術がなく、福岡で上映したものが唯一の外国語字幕付きプリントだったことによる。 珍しいドキュメンタリーも2本上映された。モンゴルの「ハルハ河の英雄的な頁」は、日本ではノモンハン事件と呼ばれている1939年の軍事衝突をモンゴル側から撮影した作品で、当時福岡近郊からの部隊が多数参加していたらしく、高齢の観客が集まり入場者ベスト1を記録した。もう1本はバングラデシュからのビデオ作品「民衆の中の顔」で、民主主義が完全に達成されていない政治社会状況を映し出していた。 また、ベトナム人監督による「空白のページ」は、ポルポト政権下のカンボジアを描いてインドシナ半島の複雑な政治状況を示し、カザフスタン映画「少年と狼」は、なじみの薄い中央アジア地域も確かにアジアの一員だとわれわれに感じさせ、ともにアジアの多様性を伝えてくれた。 「始皇帝暗殺」(チェン・カイコー監督)では俳優としても活躍しているスン・チョウ監督は、監督作「心の香り」が中国洙江撮影所による作品だったこともあり、福岡市と友好都市である広州市が窓口となって来日を果たした。 この年から期間が10日間に延長され、映画祭情報をコンパクトにまとめたハンドブックが無料配布されるようになった。
○協賛企画:パワー・オブ・アジア〜世紀末ヤングシネマ・バトルロイヤル(主催/パワー・オブ・アジアプロジェクト) ○ベトナムについての講演会(9月14日/スカラエスパシオ)